【漢方処方解説】荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)&十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
こちらの処方解説では、今までの書籍での学習と漢方研究会で習得した内容をベースに、実際に患者さまにお出しした経験から、感じたことや自分の考えを記載しています。
目次
荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)の出典
万病回春 巻8癰疽門(1587年)明代 龔廷賢著
荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)創生の歴史
荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)の構成生薬・効能
荊防敗毒散の構成生薬
荊芥・防風・羌活・独活・柴胡・薄荷・連翹・桔梗・枳殻・川芎・前胡・金銀花・甘草・茯苓(14味)
各生薬の効能
- 金銀花・連翹:外表部の風熱を散じる。清熱解毒作用があり、皮膚化膿症に使用される。外科(皮膚科)の常用薬
- 荊芥:諸瘡の毒を解す
- 防風・羌活・独活:風を逐い湿を去る
- 桔梗・枳殻・川芎・前胡・薄荷:排膿作用
- 甘草・茯苓:諸薬の調和
- 柴胡:表裏の血熱を解す
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)の出典
瘍科方筌(ようかほうせん)書写年不明 花岡青洲著
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)の構成生薬・効能
十味敗毒湯の構成生薬
荊芥・防風・独活・柴胡・桔梗・川芎・茯苓・甘草・生姜・撲樕(10味)
荊防敗毒散から前胡・羗活・薄荷・連翹・金銀花・枳穀を除き、桜皮、生姜を加えたもの。
*加連翹、桜皮のかわりに樸樕加味は浅田流。
各生薬の効能
- 荊芥:諸瘡の毒を解す
- 防風・独活:風を逐い湿を去る
- 桔梗・川芎・生姜:排膿作用
- 茯苓・甘草:諸薬の調和
- 撲樕:日本では経験的に「悪瘡」の薬として用いられ、鎮痛、消炎作用がみとめられている
- 柴胡:表裏の血熱を解す
荊防敗毒散・十味敗毒湯の運用のポイント
荊防敗毒散・十味敗毒湯の使用目標
風湿熱による皮疹に対する方剤。乾燥型の皮疹、梅雨時期の汗疱、ただれや膿(肌が清潔でないもの)、感染症罹患後の副鼻腔炎、後鼻漏など幅広く使える。湿疹の初期に使う方剤だが、慢性化している症状にも有効。矢数道明先生も慢性経過している蕁麻疹に使用している。経験的に金銀花・連翹を加えた形(荊防敗毒散)の方が、清熱解毒効果が高まる。
荊防敗毒散・十味敗毒湯が合う方の身体所見に見られるポイント
- 胸脇苦満
- 神経質
- 癰、癤を発しやすく、化膿を繰り返すフルンクロージスの体質者
- 小柴胡湯の適応者
歴代医家による十味敗毒湯の使用経験・口訣
- 此の方は青洲の荊防敗毒散より取捨したる者にて荊散(荊防敗毒散)より其の力優なりとす。(勿誤薬室方函口訣/浅田宗伯)
- 癰疽の治療は、発症時に発熱・悪寒・頭項強痛などの表証があれば、葛根湯・荊防敗毒散・十味敗毒散を選び、もっぱら発表すべきである。(瘍科秘録/本間玄調著)
- 湿潤型の皮疹は消風散、乾燥型の皮疹は十味敗毒湯を中心に加減して用いる。十味敗毒湯は消風散とともに漢方医学における皮膚疾患に重要な方剤で、二大双璧であろう。(山本巌の臨床漢方下巻/坂東正造・福冨稔明)
- 湿疹が一種の毒素によって起こるものと仮定すれば、本方は解毒臓器の機能を盛んにして、その毒素を解除する効がある。本方は常に連翹を加味して用いられる。~連翹はまた有力な解毒薬として加味されるものである。~本方は小柴胡湯の応ずる体質で解毒の効を求める場合に適する(漢方診療医典/大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎)
- 癰疽、疔腫、一切の瘡毒、焮痛、寒熱、脈緊の者を治す。(方輿輗/有持桂里)
*有持桂里が用いた十味敗毒湯(金銀花・連翹・荊芥・防風・羗活・柴胡・桔梗・川芎・枳実・甘草)荊防敗毒散中の独活、前胡、茯苓、薄荷を去ったもの。 - 私はこれに薏苡仁を加味して常用している。~本方は癰、癤を発しやすく、化膿を繰り返すフルンクロージスというべき体質者の体質改善薬として意義がある。~本方の適応する体質者は、多くに胸脇苦満があり、神経質で、小柴胡湯証の現わす体質傾向を持っている。(臨床応用漢方処方解説/矢数道明著)
荊防敗毒散に含まれる、金銀花・連翹の効能について
金銀花・連翹の効能
薬性:寒
特徴:外表部の風熱を散じる。清熱解毒作用があり、皮膚化膿症に使用される。外科(皮膚科)の常用薬。
効能:金銀花は気分病の治療に優れる。連翹は「瘡家の聖薬」と呼ばれ癰腫の結熱を散じ、上焦(肺・心)の清熱作用に優れる。
引用参考文献
- 実践漢薬学:三浦おと著 東洋学術出版社
- 活用自在の処方解説:秋葉哲夫著 ライフサイエンス
- 臨床応用漢方処方解説:矢数道明著 創元社
- 漢方常用処方解説:高山宏世編著 三孝塾
- 漢方診療医典:大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎著 南山堂
- 勿誤薬室方函口訣:浅田宗伯著
- 山本巌の臨床漢方下巻:坂東正造・福冨稔明著 メディカルユーコン
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