【漢方処方解説】柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
こちらの処方解説では、今までの書籍での学習と漢方研究会で習得した内容をベースに、実際に患者さまにお出しした経験から、感じたことや自分の考えを記載しています。
目次
柴胡桂枝湯の出典
傷寒論・金匱要略
傷寒論【第一四六条】/太陽病下篇
傷寒論/発汗後病篇
金匱要略/腹満、寒疝、宿食病篇
柴胡桂枝湯の構成生薬・効能
柴胡桂枝湯の構成生薬
柴胡5g・黄芩2g・半夏4g・桂枝2g・芍薬2g・甘草2g・大棗2g・人参2g・生姜1g
各生薬の効能
- 柴胡☓黄芩:柴胡桂枝湯の主薬。鎮静、清熱、自律神経緊張緩和作用。また利胆作用もあり、毒素を胆汁に排泄し解毒を強める。柴胡には強力な解熱効果があり、往来寒熱に著効する為、大量に配合されている。
- 柴胡☓芍薬:鎮静、鎮痛、抗精神作用。芍薬は白芍薬を用いる。
- 芍薬☓甘草:鎮痛、鎮痙作用を強める。
- 半夏☓生姜:強い制吐作用を持ち、吐気を治す。胃腸の蠕動を調整する働きがある。また、鎮咳、去痰作用もある。
- 桂枝:発熱、悪寒、自汗、頭痛等の表証を去る。消化吸収補助、末梢血管流動性促進。
- 人参:消化吸収機能や全身の機能を賦活して抵抗力を高める。
- 大棗:諸薬を調和する。栄養、滋潤作用があり、柴胡、黄芩、半夏、生姜の燥性を和らげる。
柴胡桂枝湯の運用のポイント
柴胡桂枝湯の使用目標
- 風邪を引いて数日経ち、発熱、微悪寒、倦怠感などの表証があり、なおかつ食欲不振などの兆候がある方に。
- 小柴胡湯に表症を兼ねたものに用いる。太陽少陽の合病(表証+胃腸障害)。
- 雑病で使う目標は心腹卒中痛(心下部がにわかに痛む)。
柴胡桂枝湯が合う方の身体所見に見られるポイント
- 心下支結(腹直筋の緊張、心下痞、胸脇苦満)
- 自汗(首から上)盗汗
- 微悪寒、微嘔
- 舌は微白苔
- 脈は浮あるいは弦弱
歴代医家による柴胡桂枝湯の使用経験・口訣
- ニキビ治療に応用し、胃陰虚に用いる。(漢方コラージュ/戸田一成)
- 多分に神経症状を目標にとることもある。~すなわち小柴胡湯は少陽の邪を解し、桂枝湯は太陽の表熱症状を治す。よく協力して心下支結、腹直筋の緊張や疼痛を治すのである。(漢方処方解説/矢数道明)
- 結胸の類症にして心下支結を目的とする薬なり。但表証の余残ある故に桂枝を用いるなり。~その熱状、傷寒に似て非なる者この方に宜し。~又この方に大黄を加えて、婦人心下支結して経閉する者に用いゆ。(勿誤薬室方函口訣/浅田宗伯)
- 感冒、インフルエンザなどにかかり、症状が軽度なもの、風邪症状がいつまでも残ってるものに用いる。重篤な症候はなく、ただ何となく病人であるというときに用いる。腹痛(心腹卒中)に用いる。向精神薬、体質改善薬として用いる。(中医処方解説/伊藤良・山本巌)
- 婦人故なく憎悪し、壮熱あり、頭痛眩暈、心下支結、悪心嘔吐、肢体酸軟し、鬱々として人に対するを悪み~、俗に之を「血の道」と謂う。この方に宜し。或いは兼ねて瀉心湯を服す。(類聚方広義重校薬微/吉益東洞原著・尾台榕堂校註)
柴胡桂枝湯の使用上の注意
柴胡桂枝湯の注意点
柴胡黄芩の燥性に注意。陰虚火旺には禁忌。
引用参考文献
- 註解傷寒論:影印本
- 傷寒論講義:奥田謙蔵著 医道の日本社
- 実践漢薬学:三浦おと著 東洋学術出版社
- 活用自在の処方解説:秋葉哲夫著 ライフサイエンス
- 臨床応用漢方処方解説:矢数道明著 創元社
- 漢方常用処方解説:高山宏世編著 三孝塾
- 類聚方広義重校薬微:吉益東洞原著 尾台榕堂校註 西山英雄訓訳 創元社
- 金匱要略談話:大塚敬節著 創元社
- 中医処方解説:伊藤良 山本巌監修 神戸中医学研究会 編著 医歯薬出版株式会社
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