吐き気、嘔吐などの消化器症状が漢方薬で改善【40歳女性】
ある日を境に、吐き気と嘔吐(えず)きが治まらなくなりました。精神的にも参ってしまって…
この記事では、こういった症状でお悩みの方に漢方薬をお出しして、実際に改善できた内容を記載しています。
吐き気、嘔吐などの消化器症状を漢方薬で改善する
相談者は40歳の女性。
1か月前、家族でレストランで食事をしていたところ、急に気持ちが悪くなり半分も食べられなかった。その日を境に吐き気、乾嘔、食欲不振の消化器症状が続くようになる。
みぞおち付近に違和感があり、特に食後、朝に症状が増悪。ろくに食べられなくなり、2㎏痩せた。病院では2回胃カメラをし、異常なしとの診断。
ボノサップでピロリ菌除菌を行い、その後病院にて六君子湯とラベプラゾールNaを服用するが、効果があるどころか日を追うごとに症状が悪化している。
その影響でメンタルの状態も不安定となり、心療内科を受診予定している。
患者さまの気持ちはよく分かる。胃カメラを2回しているというのに原因が見当たらないのなら、精神的なものかもしれない…と疑うのは当然のことだった。
しかし、この症状は心療内科の向精神薬では治らない。どう考えても上部消化管に何らかの異常が起こっている。
胃カメラにはうつらない何か。それを見つけ出す。
吐き気、嘔吐などの消化器症状を、漢方的に可視化する
患者さまの生活背景や素体の状態にそれほど問題は感じなかった。今までこのような症状は起きたことはない。ただ、ここ1か月胃がキリキリすることあったという。
もともとは食欲正常で胃気も問題なかった方。まずは「食滞」を疑い、半夏瀉心湯を初手に選んだ。胃を苦味のある生薬でスッキリさせれば治るのではないかなと。
1週間後。
少しは食事が摂れるようになったと仰っていたが、吐き気・嘔吐症状に変化はない。薬はおそらく効いていない。ということは、見立てを変える必要がある。
深呼吸をして、次回の手を探る。
問診の中で一番重要なことは悪化要因を掘り下げること。お子さまが小学生に通うようになり、生活ルーティンが変わった。それ以外、変わったものを食べたり特に要因は見当たらないという。
胃に負担がかかるような変わったものを食べた記憶はありませんか?
いえ、いつも通りの生活で普段通りの食事を摂っていました。
これでは不十分だった。質問を変えてみることにした。
では、アイスコーヒーやアイスクリームなどは食べていませんか?
はい、飲み物は基本的に氷を入れて飲んでいます。ピザの横には必ずアイスコーヒー。アイスクリームも大好きで、身体に悪いかなと思って2日に1度にしています。
胃の調子がおかしくなってから冷たい水は飲めなくなりました。そういえば、家族にずいぶん手足が冷たいねって言われるようになったかも。頭重感もあります・・・
この返答で、見立て違いをしていたことがわかった。
吐き気、嘔吐などの消化器症状を呉茱萸湯という漢方薬で改善する
「胃寒による、嘔吐噦病」
金匱要略・嘔吐噦下痢病。半夏瀉心湯の次に記載されている「茱萸湯(呉茱萸湯)」。
これだ。
処方を呉茱萸湯に変更し、1週間。
嘔吐(えず)きがどんどん減っていき、ここではじめて症状のスケール10→5になる。精神状態も安定してきて、呉茱萸湯を継続しながらしばらく様子を見ることになった。
心底ホッとした。なんとしてもこのタイミングで症状を改善させたかった。
呉茱萸湯の漢方処方解説はこちら
今回の症例、吐き気・嘔吐などの消化器症状について感じたこと
問診の最中、師の言葉が思い浮かんだ。
呉茱萸湯の適応は頭痛じゃない。「嘔吐噦下痢病」だと。
呉茱萸湯は頭痛で使われることで有名だが、本態には「胃の冷え」があり「嘔吐噦下痢病」が正証である。方剤の出典を正しく理解しておく必要がある。基本をしっかりと押さえておくことが、治療結果に直結する。
原因は、毎日のように摂っていた冷飲とアイスクリームだったということになる。患者さまには元気になってからも冷飲食はしばらく控えてもらうようにお願いした。
症状の原因を探るには、とにかく聞きまくる
問診の仕方をクローズドクエスチョンに変えたことも幸いした。ここに気が付けなければこの方を助けることができなった。
聞いて聞いて、聞きまくる。
原因がつかめない時、ちょっとしつこいかもしれませんが、たくさん質問しますのでお付き合い頂けると幸いです。
何はともあれ症状が改善に向かって本当に良かった。こういった方を助ける為に、漢方やっててよかった…と心から思う。